オミクロン株の潜伏期間、大半は3日以内で、デルタ株の潜伏期間よりもさらに短い
デルタ変異株感染者における短い潜伏期間
事業協力者
茨城県潮来保健所 緒方剛
2021年1月13日
背景
デルタ株感染者における潜伏期間の査読のある報告は、これまで中国南部からのみである。本研究の目的は、デルタ株の潜伏期間を、非デルタ株との比較において、調査するものである。
方法
対象は、茨城県潮来保健所、土浦保健所および大阪府藤井寺保健所管内において2021年9月までに報告されたCOVID-19感染患者であって、ウイルスに曝露された日が1日に特定されているワクチン未接種者である。このうち、デルタ株患者は本人または接触者からL452R変異が検出された者であり、非デルタ株患者は2021年6月7日までに報告された患者またはそれ以後に報告されたL452R陰性の患者である。
デルタ変異株患者群と非デルタ株患者群において、ウイルス曝露から発症までの期間(潜伏期間)を計算した。ベイズ統計の枠組みを用いて、データにパラメーター分布を適合させ、推定値を求めた。
結果
対象のウイルスに曝露された日が1日に特定された患者は、214例であった。
このうちデルタ株群121例の潜伏期間は平均3.7日であった。赤池情報量基準(AIC)がガンマ分布およびワイブル分布より小さかった対数正規分布をデータに適合させた場合、推定平均値は3.7(95%信用区間3.4-4.0)日であった。性、年齢、接触時食事の有無、接触場所によって、推定値に有意な差は認められなかった。非デルタ変異株群103例の潜伏期間は平均4.9日であり、対数正規分布を適合させた場合の推定平均値は5.0(95%信用区間4.5-5.6)日であった。マンウィットニー検定でも、差は有意であった(p値=0.000)。対数正規分布を適合させた場合の潜伏期間の97.5%点は、非デルタ株群の10.4(95%信用区間8.6-12.7)日に対して、デルタ株群では6.9(95%信用区間5.9-8.0)日であった。
考察
デルタ株感染者では非デルタ株に比較して、潜伏期間が短かった>
デルタ株については8日間程度に短縮することが適切と考える。または、オミクロン株では、さらに潜伏期間が短いことから、7日以下が適当と考える。